ダウン症の子のいる暮らし 健・育・学・遊 ~自立をめざす母親のブログ~

H13年にダウン症(21トリソミー)の子どもを出産、現在子育て真っ最中の母親です。 絶望的な気持ちでスタートした子育てですが、いろいろと問題はあるものの笑いあり、涙ありの楽しい毎日を過ごしています。 子育てをしてきた中で、悩みの解消、役に立った情報、成長の道筋、健康管理なども交えて書いていきます。

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遠山啓「さんすうだいすき」を知る原点となった本『歩きはじめの算数』障害児教育を考える

      2016/05/09

わが子に算数を教えるにあたって、おおいに参考になったのが、「さんすうだいすき」です。

当時、絶版になっていた「さんすうだいすき」を探し、古本屋で入手したのは、遠山啓という数学者の書いた「歩きはじめの算数」を読んで、考え方に納得し、共感したからです。

歩きはじめの算数はこれ


『歩きはじめの算数』~ちえ遅れの子らの授業から~遠山 啓編

この本は、1972年に国土社から刊行されたものです。

遠山啓(1909~1979)という数学者が中心となって書かれています。

この本では、
知的障害のある子の知的能力を高めるためには、教科教育(系統をふまえた指導)が重要であると考えられています。

生活教育は”知的に遅れている障害そのものを克服するためではなく、障害をうけていない部分を伸ばそうとしている”のに対して、教科教育は”思考する力をつけて、知的発達を促すために必要だ”と述べています。

知的発達を促すためには、発達を自然のうちに放置しておくのではなく、発達の初期の段階から確実に積み上げていく必要があります。

教科の指導に入る前にそこに進むために必要な、基礎的な概念や認識、思考方法を教科学習の準備のための基礎教育として指導しなければなりません。

普通の子どもが就学前に自然のうちに得てきてしまうようなものを教育の中で意図的に基礎教育として組織しようと取り組まれています。

基礎教育は、普通の子どもたちにおいても、発達の初期段階で意図的に指導されることにより、ものの見方や考え方は確実で急速な発達を遂げると思われます。

その考え方をもとに作られたのが「さんすうだいすき」です。

「さんすうだいすき」はこれ


遠山啓氏は、晩年、学びに困難のある子どもたちに、算数の楽しさを教えようと、自宅で「真学塾」をひらかれています。
遠山氏亡きあとは、小笠毅氏が「遠山真学塾」を主宰されていて、著書「教えてみよう算数」では、「さんすうだいすき」シリーズにそって、エッセンスを伝えています。

「教えてみよう算数」はこれ

 

『歩きはじめの算数』で、実践以外の部分で、なるほどと思ったことのなかに、「調理実習」の話がありました。

生活単元学習や作業学習に「調理実習」があります。
調理学習の中に数量的な処理を必要とする場面は、とても多いです。

例えば、買い物、材料の計量、分配、盛り付けなど、数量的処理が必要です。

しかし、その場で、算数そのものを理解させたり、算数的思考を育てる指導は困難なことだと思います。

なぜなら、その場面があまりに具体的過ぎる上に、他のいろいろな条件も加わっているので、その中から、法則や考え方、算数そのものを学びとらせることはできにくいからです。

足し算、引き算、分割、かさ(体積)の認識等に関する基礎的な理解ができた子どもに応用場面として調理等の学習に出会わせるなら望ましいことです。

 

著者の方々の算数に対する思いが伝わってくると思うので、昭和47年に書かれた「歩きはじめの算数」のあとがきを記載します。

”たとえちえが遅れている子どもであっても知的発達をぬきにして子どもの発達を考えることはできません。私たちは、ちえの遅れた子どもたちにも、知的発達を促すような教育を欠かすことはできないと考えています。

この知的発達を促していく教育の一つとして算数教育を欠かすことはできません。また、人間がこれまでに作り出してきた算数という人間がよりよく生きていけるための文化(遺産)をその一端たりとも与えていくことが私たちの役割であるとも考えます。

ちえ遅れの子どもにとって、いちばん苦手であり、やっても効果のあがりにくいといわれてきている算数教育をいかに組み立てていったらよいかの実践的研究に、私たちは昭和42年から取りくんできました。昭和42年に「タイルを用いた数の導入を」43年に「演算への導入と液量の指導」、44年に「図形指導」を主に研究し実践してきました。

これらの研究の中で、いつも問題になってきたのは、「一つの授業をくむとき、その内容が理解できるにはも、その前に何がわかっていなくてはならないのか」ということであったわけです。ここに述べてきた「算数教育の基礎の内容と方法」も、いわゆる算数が学習できる以前に何が獲得されていなくてはならないのかという問題の追及から始めて、研究し、実践してきたものです。

ここに述べてきた基礎の教育は、ちえ遅れの子どもの授業の実践をとおしたものでありますが、ちえ遅れの子どもばかりでなく普通に発達してきている幼少期の子どもにとっても、指導されなくてはならないものが多く含まれていると考えられます。

この研究報告は、私たちのきびしい集団討議をとおしながら授業研究をくり返してきたものです。同時に、八王子養護学校の私たちの仲間の実践や協力と数学教育協議会の仲間のご指導やご協力によるところも大きいものです。(後略) 昭和47年1月  著者一同”

(「歩きはじめの算数~ちえ遅れの子らの授業から~」遠山啓編 国土社 あとがきより抜粋)※

 

以前に比べると、いろいろな取り組みをされる親御さんが増え、算数ができるお子さんは、増えてきたのではないかと感じます。

しかし、「計算ができても、買い物できなければ何にもならない。電卓あったら・・・」と計算の力を軽視する方もあります。
ある程度、計算ができるけれど、買い物の場で全く役に立たないという場面に出くわすからだと思います。

でも、計算もできるからこそ、育っている部分もあるのではないか?と思うのです。

買い物という実生活で学び始めたときに、積み重ねがあるかないか、「調理実習」の話につながると感じています。
だから、学習も続けながら、買い物の経験を重ねていくことが理想です。

「そんなに勉強させて何になるの?」とおっしゃる方もありますが、やってきたことに対して無駄なことは何一つないと思います。
「○○しても、何の役にも立たない。」「○○なんて使わない。」という人はあるけれど、知的発達になんらかの影響を与えているはずと信じています。

机上でやったことを体験につなげていかなければならないので、経験や体験も大事にということです。

 

 

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